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離婚についてのワンポイントアドバイス

[9] 交通事故の賠償金は離婚時に財産分与の対象となるか?

 私の夫は,交通事故にあって,多額の賠償を受けました。
 その後,夫と離婚をすることになったのですが,交通事故はあくまで結婚期間中に起こったものですし,賠償金もすでにもらっているのですから,その賠償金も含めて財産分与を求めることは可能でしょうか?
 特に逸失利益は,妻である私の収入減の賠償ともいえるものだと思うのですが,どうでしょうか。

産分与は,夫婦の共有財産についての生産を求めるもので,その財産の種類等に関わらず共有財産であれば,広く認められるものです。
 ここで,分与を求めることができる財産を共有財産に限定したのはどうしてでしょうか?

 それは,財産分与というのが,公平の観点から夫婦が共同で築き上げた財産については離婚時においては,名義にかかわらず,それぞれに分与するのが公平だからです。
 相続財産のように,夫婦が共同で作り上げた財産ではないものについては,分与の対象となるとかえって不公平になってしまいます。  では,交通事故の賠償金というのは,財産分の対象とするのが公平なのでしょうか。

 交通事故は,原則としては,受傷した本人の損害の賠償であって,夫婦が共同で築き上げた財産とはいえません。ですから,交通事故について財産分与の対象とすることは不公平かと思えます。
 この点,大阪高裁平成17年6月9日決定があります。
 この決定では,交通事故の損害賠償金の内訳ごとに財産分与の対象となるかどうかを検討しています。
 まず,慰謝料については,財産分与の対象にならないとしています。
 そて,逸失利益については,一応,財産分与の対象になるとしましたが,ただし、離婚後の逸失利益相当額については財産分与の対象にならないとしました。
 かように,損害項目ごとに財産分与の対象となるのかどうかについて分けているのは,それぞれの賠償項目の意味あいを考えて,分与の対象とするのが公平かどうかという価値判断があるからだと思われます。

 すなわち,慰謝料というのは,怪我や後遺障害を負った人自身の精神的苦痛に対する賠償なので,受傷した当事者でない夫婦の相手方が取得するべきものではないと考えられます。
 これに対し,逸失利益は,労働の対価に相当する部分なので,財産分与の対象になります。夫の労働というのは夫婦の他方の協力による部分も大きいからです。
 もっとも,離婚をしてしまえば,その後の労働は,特に妻の協力がないことになるので,その点について財産分与を求めることはできないことになります。
 具体的には,逸失利益について,離婚時までの期間について割合で算定した金額が財産分与の対象となろうかと思います。