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離婚についてのワンポイントアドバイス

[9] 不貞配偶者への慰謝料免除は,不貞の相手方にも及びますか?

 私は,夫の不貞行為が原因で夫と離婚をしました。離婚に際して,夫には慰謝料請求を免除しました。
 その後,不貞行為の相手方に対して慰謝料を請求したいと思っています。
 ただ,夫に対して慰謝料を免除してしまっているので,不貞行為の相手方にも請求ができないのでしょうか。

貞行為の相手方に対する慰謝料を免除した場合,不貞行為の相手方にも,慰謝料請求ができなくなってしまうのでしょうか。
 離婚にあたっては,色々な交渉の結果,慰謝料の支払いを免除することもあり得ます。
 例えば,離婚すること自体を優先したいという場合に,慰謝料で揉めていると離婚が長期化するので,慰謝料の支払いは求めないという場合などがあります。

 ただ,かように夫婦の相手方に対する慰謝料を免除した場合には,不貞行為の相手方にも慰謝料を請求できなくなるかが問題です。
 この点,最高裁平成6年11月24日判決は,不貞行為の当事者である夫に対して慰謝料債務を免除しても不貞行為の相手方に対して,債務免除の効力は及ばないとしています。

 この事例では,妻と夫との間において,調停が成立しており,その中にいわゆる精算条項があり,「本件条項に定めるほか名目の如何を問わず互いに金銭その他一切の請求をしない」となっておりました。

 その,条項の中からは,妻が相手方女性に対しても免除の効力を及ぼす意思であったことは何らうかがわれず,さらに,妻は本件調停成立後4箇月を経過しない間に相手方女性に対して訴訟を提起したという経緯がありました。

 判決では,不貞行為の2人は,いわゆる「不真正連帯債務者」であって,免除の効力が相手方に及ぶとしている連帯債務の規定の適用はないとしています。
 そこで,この判決を踏まえると,裁判上の和解ないし調停において免除の条項を入れる時には,当事者が不貞行為の他方当事者に請求をする意思があるのかどうかを条項上明らかにする形で和解をする必要があろうかと思われます。
 例えば,「当事者双方は,互いに,本件和解条項に定めるほか何らの債権債務関係がないことを確認する。ただし,乙の丙に対する慰謝料請求を免除するものではない。」といった条項が考えられます。