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宅地建物取引 ワンポイントアドバイス

[1] 会社を退社したら社宅からの退去を求められるか?

 当社で雇用していた社員が先日,退社しました。
 当社で就業している間は,社宅ということで,他の賃料水準より低額で住居を提供していました。
 本人は住居の明け渡しを許否していますが,法律的には明け渡しを求めることができるのでしょうか?

家賃が低廉等の通常の賃貸借ではないという一定の条件があれば,退去を求めることができます。
社が所有ないし賃借している建物を従業員に通勤や生活の便宜を図るために「社宅」として提供していることがあります。
 かような場合に,会社は従業員が退職をしたら当然に社宅からの退去を求めて,賃借物件の返還を求めることが出来るでしょうか。

 まず,会社建物の管理人が建物を管理するために住み込んでいる場合など,居住と雇用が密接な関係にある場合には,雇用契約が解消したら,当然に住み込み場所から退去しなければなりません。

 では,建物管理のための居住というほど密接な関係はなく,業員に通勤や生活の便宜を図るために「社宅」として,会社所有物件や賃借物件を提供している場合にはどうでしょうか。

 東京地裁 平成23年3月30日判決は,
@本件社宅の利用料が低額であり,その損失を原告が負担していたこと,
A原告は被告から敷金や礼金の徴収もしなかった
B貸室賃貸借契約書1条に,「当社を退職した場合は,この契約は無効となり,ただちに退去しなければならない」と定められている
等の事情から,本件社宅契約は,その法的性質が賃貸借であるか否かを問わず,雇用契約の終了と同時に終了するものと理解すべきであるとしています。

 ここで,注意を要するのは,会社が従業員に賃貸している物件は全て「社宅」として,雇用関係が終了後に返還を求められるものではありません。
 判例も,上記の@〜Bの事実がある場合に契約が終了するものとしています。  特に,@の利用料が低額であるという点は重要な要素です。

 そこで,使用者が所有している建物を社宅として賃借していても,その使用料が近隣物件とそれほど変わらないような場合には,通常の賃貸借契約と変わらないこととなり,借地借家法が適用されて,賃料不払いや正当理由がない限り明渡しを求めるのが困難となる可能性があります。