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宅地建物取引 ワンポイントアドバイス

[2] 賃貸家屋内での自殺に対する損害賠償請求について

 賃貸アパートを所有し経営していますが,先般,居室内で賃借人が自殺をしました。
 居室内で自殺があった場合,次の入居者にそのことを告げなければならず,その場合には,借り手が現れるかどうかとても不安です。
 この場合,保証人や相続人に損害賠償を請求できるのでしょうか。

相続人が相続の放棄をしていない場合は,相続人に対して,一定の家賃減額分の請求ができます。また,保証人に対しても同様の請求ができます。
 貸家屋の中で,賃借人が自殺した場合,心理的嫌悪感から直ちに他へ賃貸することは困難であり,オーナーには相当額の損害が発生します。その場合,賃貸借の保証人に対して,損害賠償請求をすることになります。

 というのは,賃借人は,賃貸物件について,賃貸人に迷惑をかけないように使用する法律上の義務があり(法律上は,「善管注意義務」といいます。),物件内で自殺をして,オーナーに損害を与えることは賃借人としての善管注意義務に違反しているからです。

 ただ,こういった場合の損害賠償額については,基準となる判例がなく,我々弁護士としても,明確な回答をすることができないところでした。  が,近時,かような事案についての東京地裁の判例が出ました。

 東京地裁平成22年9月2日判決は,1年間は賃貸不能(賃料収入0),その後の2年間は賃料の半額程度の損害と判断しました。  もっとも,この判決では,物件の立地が良くて,流動性が高いことから,心理的嫌悪感が他の物件に比して早く進行することを考慮しておりますので,物件場所等によっては,上記以上の損害が認定される可能性も十分にあると思われます。

 なお,賃借人の相続人に対しても,損害賠償請求をすることは出来ますが,相続人が相続の放棄をすると,相続人に請求することが出来なくなります。もっとも,相続人が保証人を兼ねている場合には,相続放棄をしても保証人としての責任まで免れるわけではありませんので,損害賠償請求が可能です。