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宅地建物取引 ワンポイントアドバイス

[6] 家賃を増減する場合は,どのような手続きが必要でしょうか?

 私は親から,建物を安く借りて店舗を経営していました。
 ところが,最近は,親と折り合いが悪くなり,「店舗から立ち退かないと家賃を適正家賃に増額する」と言われています。
 この場合,立ち退きをしないと,一方的に家賃は増額となってしまうのでしょうか?私は,これまでと同じ家賃を支払っていれば良いのでしょうか?

家賃額について合意ができないとすると,裁判所において家賃の増減請求をすることが必要です。
 貸アパートの家賃を値上げしたいという場合には,どのように進めたらよいでしょうか。当初の賃貸額が特殊な事情から低廉であった場合などに問題となります。
 まずは,契約書の確認が必要となります。契約書に一定期間は家賃の値上げはしないと記載があるような場合には,特約として有効となりますので注意が必要です。
 特約がない場合には,まず,交渉により家賃の値上げを求めることになります。ただ,一方的に家賃の値上げを通告しても有効にはなりません。この場合,家賃の受領を拒否したとしても,入居者側は家賃を供託してくるので,あまり意味はありません。

 家賃の増額(減額)については,借地借家法32条に「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」との条文があります。
 そこで,家賃の増額をする場合には,この規定に基づき,調停・訴訟を行う必要があります。

 調停・訴訟で,新しい家賃額が決まるまでは,入居者は従前の家賃を支払って入れば良いことになっています。ただし,新賃料が決まったら,既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならないことになっています(同法32条第2項)
 なお,訴訟で賃料の増額が争われた事案で,当初の賃料が親子関係に基づく特殊な事情から設定されたものである場合に,増額請求時点での適正賃料額にまで増額させることは相当でなく,公平の観点から,訂正賃料額と従前の約定賃料額の中庸値をもって新賃料額とした判例がありますので注意が必要です(東京高判 平成18年11月30日判決)。

 もっとも,近時の社会情勢では,賃料の減額を要求される事の方が多いかもしれません。ただし,賃料の増額と同様に,借り主は,家賃が高いと思っても勝手に減額することはできません。貸し主が減額に応じない場合には,賃料減額請求をし、その上で調停を起こす必要があります。調停でもまとまらない場合は、増額と同様に賃料減額請求事件を起こすことになります。そして,減額が相当という判決が確定して初めて減額が認めらます。
 このときには,貸し主は,減額請求があった日から判決確定までの従来賃料の差額に年1割の金員を上乗せして賃借人に返還する必要があります。

 なお,借り主が一方的に家賃を減額して支払ってきた場合には,貸し主としては,これを認めていないということを明白にしておく必要があります。そこで,「○月分の賃料については賃貸借契約書での定めでは○○円となっていますが,○○円しかお支払いいただいておりませんので,○日以内に残金○○円をお支払いください。」といった督促を書面でする必要がありますので注意が必要です。